東京地方裁判所 平成11年(ワ)18462号 判決
原告 破産者有限会社おおすみ車輌破産管財人 宮崎好廣
被告 水谷一城
被告 第一商事株式会社
右代表者代表取締役 谷村康二
右訴訟代理人弁護士 伊東隆
被告 松橋義則
主文
一 原告と被告水谷一城との間において、原告が次の各陸送賃債権を有することを確認する。
1 ホンダ中古車販売株式会社宇都宮営業所に対し金四三万六五九〇円
2 ホンダ中古車販売株式会社橋本営業所に対し金三一万八三七一円
3 株式会社ガリバーリンクコーポレーションに対し金五万〇四〇〇円
二 被告水谷一城は、原告に対し、金一〇四万六五六七円及びこれに対する平成一一年九月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告と被告水谷一城及び被告第一商事株式会社との間において、原告がホンダ中古車販売株式会社城北営業所に対し金八四万一五七五円の陸送賃債権を有することを確認する。
四 原告と被告第一商事株式会社との間において、原告がホンダ中古車販売株式会社埼玉営業所に対し金三四四万〇八五〇円の陸送賃債権を有することを確認する。
五 原告と被告第一商事株式会社との間において、原告が別紙供託金目録一記載の供託金について還付請求権を有することを確認する。
六 原告と被告三名との間において、原告が次の各陸送賃債権を有することを確認する。
1 株式会社ホンダクリオ埼玉(中古車センター扱い)に対し金三七万〇六五〇円
2 株式会社ホンダクリオ埼玉(法人営業部扱い)に対し金一四万五七四〇円
3 株式会社ホンダクリオ埼玉(大宮店扱い)に対し金六万六一五〇円
4 株式会社ホンダクリオ埼玉(草加店扱い)に対し金二万九四〇〇円
5 株式会社ホンダクリオ埼玉(所沢店扱い)に対し金一一万三九二五円
6 株式会社ホンダクリオ埼玉(オートテラス草加扱い)に対し金三一万一三二五円
7 株式会社ホンダクリオ埼玉(オートテラス川口扱い)に対し金一万二六〇〇円
8 株式会社ホンダクリオ埼玉(オートテラス所沢扱い)に対し金一三万四九二五円
七 訴訟費用は被告らの負担とする。
八 この判決は、第二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
主文と同旨
第二事案の概要
一 本件は、破産者有限会社おおすみ車輌(以下「破産会社」という。)の破産管財人である原告が、破産会社の債務者に対する陸送賃債権を譲り受けたとする被告らに対し、その陸送賃債権について原告に帰属する旨の確認(主文第一、三、四、六項)を求めるとともに、被告水谷一城(以下「被告水谷」という。)に対し、同被告が還付を受けた、破産会社の債務者である株式会社ホンダベルノ新東京及び株式会社ガリバーリンクコーポレーションの供託した供託金について、不当利得としてその返還及び訴状送達の日の翌日である平成一一年九月五日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払(主文第二項)と、被告第一商事株式会社(以下「被告第一商事」)に対し、破産会社の債務者である株式会社エヌ・ティ・ティ・ロジスコの供託した供託金の還付請求権について原告に帰属する旨の確認(主文第五項)を求めている事案である。
二 前提事実(当事者間に争いがない事実及び証拠上容易に認定することができる事実)
1 破産会社は、平成一一年二月二六日、東京手形交換所において、小切手の不渡届により事実上倒産し(甲一)、同年三月八日、東京地方裁判所に破産を申し立て(甲一二)、同月二五日、破産宣告を受け、原告が破産会社の破産管財人に選任された(本件記録)。
2 破産会社は、自動車の陸送等を目的とする会社であるが、平成一一年一月一日から同年二月二六日までの間に別紙債権譲渡整理表記載の各第三債務者の依頼により自動車を陸送し、同目録記載のとおりの陸送賃債権を取得した(甲一二、弁論の全趣旨)。
3 破産会社名義で、平成一一年二月二二日から同年三月一日ころにかけて、内容証明郵便で破産会社の債務者に対する陸送賃債権について、被告水谷、被告第一商事及び被告松橋義則(以下「被告松橋」という。)に債権を譲渡した旨の通知がされ、別紙債権譲渡整理表記載のとおり、各第三債務者に右通知書が到達した(甲八、九の一ないし三、乙二の一ないし三及び五、弁論の全趣旨)。
4 別紙債権譲渡整理表記載5の1ないし3の各第三債務者は、債権者不確知を原因として別紙供託目録記載のとおり供託した(甲二、五の三、六の四)。
5 被告水谷は、平成一一年三月一〇日に別紙供託金目録二記載の供託金七九万一九四二円を、同月三〇日に別紙供託金目録三記載の供託金二五万四六二五円の還付を受けた(甲五の一、六の一)。
6 破産会社は、平成五年ころから経営が悪化し、平成六年ころから法人税等の税金の滞納が始まり、平成九年には社会保険料等についても滞納するようになり、いわゆる高利の金融会社等から借入れを行っていたが、平成一〇年二月に事務所が罹災した後、破産会社の代表者の妻からの援助でこれらの借入れの一部を整理した。しかし、未整理分の借入れの返済のため、ほどなく高利の金融会社等から借入れを行うようになり、平成一一年二月一〇日、弁護士につなぎ融資を得て任意整理することを依頼したが、同月二二日、つなぎ融資を得ることができないことになったため、弁護士が破産会社の債権者に負債の整理をする旨の通知書を発送し、同日には、破産会社の各債権者から第三債務者に対し債権譲渡の通知書が発送され、翌二三日及び二四日には、振出手形の所持人に一部の支払をして手形の依頼返却をしていたが、二六日には、前記1のとおり小切手の不渡届により事実上倒産した。その負債総額は、約一億四〇〇〇万円であり、資産は、本件陸送賃債権等の約一一〇〇万円であった(甲一〇ないし一二)。
二 被告らの貸金債権等
(被告水谷の主張)
1 被告水谷は、平成一一年一月二一日、破産会社に対し、金五〇万円及び金五一万一〇〇〇円(合計金一〇一万一〇〇〇円)を、弁済期を同年一月二九日、手形小切手の不渡事故が生じたときは、期限の利益を失う旨の約定で貸し渡した。
2 破産会社と被告水谷は、平成一一年一月二一日、右1の貸金の担保として、ホンダ中古車販売株式会社、株式会社ホンダベルノ新東京、株式会社ガリバーリンクコーポレーション、株式会社ホンダクリオ埼玉等に対する破産会社の債権全額について、その譲渡契約を締結し、手形小切手の不渡事故が生じたときは、その譲渡を第三債務者に通知する旨約した。
3 破産会社は、平成一一年二月二二日、被告水谷に対し、右2の債権を譲渡し、第三債務者に対し、内容証明郵便でその通知をした。
4 破産会社は、右2の債権譲渡契約において、手形小切手の不渡事故が生じて、その譲渡を第三債務者に通知したときは、被告水谷が供託目録二及び三記載の各供託金の還付を受けることができる旨約した。
5 破産会社は、平成一一年三月一〇日供託目録二記載の供託金について、同月三月二四日同目録三記載の供託金について、被告水谷が還付を受けることに同意をした。
(被告第一商事の主張)
1 被告第一商事は、平成一〇年一二月二八日、破産会社に対し、金二〇〇万円を、弁済期を平成一一年一月一一日(その後、利息の支払があったので、同年二月二六日の後まで猶予した。)とし、手形小切手の不渡事故が生じ、又は破産の申立てがあったときは、期限の利益を喪失するとの約定で貸し渡した。
2 破産会社と被告第一商事は、平成一〇年一二月二八日、右1の貸金の担保として、期限の利益の喪失を停止条件とするホンダ中古車販売株式会社、株式会社エヌ・ティ・ティ・ロジスコ、株式会社ホンダクリオ埼玉、株式会社ホンダベルノ新東京に対する破産会社の現在及び将来の売掛金のうち各二〇〇万円を上限とする債権について、債権譲渡契約を締結した。
3 破産会社が、平成一一年二月二六日、小切手の不渡事故を起こし、右1の貸金返還債務につき期限の利益を失い、債権譲渡の効果が生じたので、被告第一商事は、同年三月一日、平成一〇年一二月二八日に破産会社からその代行を委ねられた債権譲渡の通知書の発信をした。
(被告松橋)
1 被告松橋は、破産会社に対し、平成一一年二月一〇日に金一三八万円を、同月二六日に金一〇万円を、弁済期を翌三月九日と定めて貸し付けた。
2 破産会社と被告松橋は、平成一一年二月一〇日、破産会社の株式会社ホンダクリオ埼玉に対する債権一四八万円を譲渡する旨の契約を締結した。
(原告の認否等)
1 破産会社は、被告水谷から、平成一一年一月二一日ころ金五一万一〇〇〇円を借り入れたことは認めるが、その余の事実は争う。金五〇万円は、平成一〇年一〇月ころ被告水谷から借り受けたものである。破産会社は、右貸金債務について平成一一年二月二〇日ころまで利息を支払い、被告水谷からその債務の返済につき同月末日までの猶予を得ていたが、被告水谷が同月二二日に債権譲渡の通知を発したのは、弁護士の介入があることを知って、自ら他の債権者に先んじて目的債権を排他的に取得しようとしたものである。
2 破産会社は、被告第一商事から、平成六年ころに金一〇〇万円を、平成九年夏ころ金一〇〇万円を借り受けたが、その余の事実は争う。
3 破産会社は、被告松橋から、平成一一年一二月一〇日ころに金一三八万円を借り入れたことは認めるが、その余の事実は争う。
三 否認権の行使
(原告の主張)
1 破産会社が平成一一年二月二二日に被告水谷に対して債権譲渡したとすれば、右契約は、破産債権者を害することを知ってされたものであるから、破産法七二条一号により否認する。
2 破産会社が平成一一年三月一〇日又は同月二四日に供託目録二又は三記載の各供託金について被告水谷が還付を受けることに同意をしたとすれば、その同意は、破産会社が支払停止後に破産債権者を害することを知ってされたものであるから、破産法七二条一号又は二号により否認する。
3 被告らの債権譲渡契約は、破産会社の支払停止時に債権譲渡の効力を発生させた上で、目的債権を排他的に取得しようとする契約であり、被告第一商事については平成一〇年一二月二八日、被告松橋については平成一一年二月一〇日において担保権の設定があったと解されるところ、右被告らが対抗要件を具備したのは、右担保設定時から一五日以上経過した時点であるから、右対抗要件の具備について破産法七四条により否認する。
4 また、支払停止を停止条件とする債権譲渡契約は、危機否認及び故意否認の対象となる債権譲渡と実質的に変わるところがないから、信義則に照らして破産法七二条一号又は二号の準用により、停止条件付債権譲渡契約を否認する。
(被告第一商事の反論)
停止条件付債権譲渡契約は、その契約を締結した時点において対抗要件を具備すると、借主の信用を失わせ、その経済活動を著しく制約することになることから、借主の取引先に対する信用を維持しつつ、借主が運転資金を得るための目的で右契約を締結したのであり、特に、本件では、契約時においては、破産債権者を害する意図も認識もなかった。
第三当裁判所の判断
一 被告水谷関係
1 前記前提事実及び証拠(甲五の一ないし六、六の一ないし七、九の一ないし三、一三、丙一、二、四、証人小野寺宏匡)によれば、次の事実を認めることができる。
破産会社は、第一通商こと被告水谷から、平成一〇年一〇月ころに金五〇万円を、利息は一〇日毎に一〇万円の約定で、平成一一年一月二一日ころに金五一万一〇〇〇円を、利息は一〇日毎に一一万一〇〇〇円の約定でそれぞれ借り受けた。
破産会社は、平成一一年一月二一日ころに金五一万一〇〇〇円を借り受けるに際し、右貸金合計金一〇一万一〇〇〇円を担保するため、被告水谷との間で、破産会社の債務者に対する債権を譲渡する旨の譲渡担保契約を締結し、その契約において、破産会社に不渡りなどの事由があった場合には、その担保権の実行をすることができる旨を約した。また、被告水谷は、その際、破産会社代表者に、供託金の還付請求についての承諾書(甲五の四、六の五。ただし、日付、供託金の表示等の記載のないもの)に署名押印をさせた。
破産会社は、その後同年二月二〇日まで約定の利息を支払い、右貸金債務について同月末日まで支払を猶予してもらっていたが、被告水谷は、同月二二日、破産会社が負債の整理を行うために弁護士が介入したことを知るや、破産会社に対する貸金債権の回収が困難になるおそれがあるとして、右担保権の実行についての約定の事由(不渡りや履行期の徒過等)がないにもかかわらず、破産会社から既に交付を受けていた債権譲渡証書(丙三、ただし、日付等の記載部分は白紙である。)の日付を平成一一年二月二二日と記載して、破産会社に代わって、第三債務者に対し、既に交付を受けていた債権譲渡の通知書(ただし、日付等の記載部分は白紙である。)を発送し、同月二二日ないし二四日に右通知書は第三債務者に到達した。
その後、第三債務者である株式会社ホンダベルノ新東京及び株式会社ガリバーリンクコーポレーションが破産会社に対する陸送賃債務を債権者不確知により供託したことから、被告水谷は、前記承諾書の日付や供託金の表示等を記載して、還付請求をし、供託金の還付を受けた。
2 なお、被告水谷は、破産会社が、平成一一年二月二二日に被告水谷に対し第三債務者に対する破産会社の陸送賃債権を譲渡した旨及び同年三月一〇日又は二四日に被告水谷が供託目録二又は三記載の各供託金について還付を受けることに同意をした旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
3 右1の事実によれば、被告水谷は、平成一一年一月二一日ころ、破産会社との間で、被告水谷の破産会社に対する貸金債権を担保するため、破産会社の陸送賃債権を譲渡する旨の譲渡担保契約を締結し、約定の事由が発生した場合に限り、その担保権の実行として、債権譲渡の通知を行う旨を約したが、その担保権の実行についての約定の事由が発生していないにもかかわらず、その担保権の実行として債権譲渡の通知をしたことが認められるから、この譲渡担保の実行(債権譲渡の通知)は、破産会社と被告水谷との間で締結された譲渡担保契約に反するものであって、破産会社(原告)に対してその効力を主張することができないものである。したがって、被告水谷の債権譲渡については、適法な対抗要件の具備がされているとは認めることができず、その債権譲渡を原告に主張することはできない。
また、右の事実によれば、破産会社の被告水谷に対してした供託金の還付請求の承諾は、被告水谷の譲渡担保の実行が、譲渡担保契約に則って行われることを前提とするものであることが明らかであるところ、右のとおり、被告水谷のした譲渡担保の実行(債権譲渡の通知)は、譲渡担保契約に反するものであるから、破産会社のした右承諾はいまだ効力を生じていないし、また、被告水谷において、還付を受けた右供託金を保持すべき事由もないと認められる。
そうすると、原告の被告水谷に対する債権確認請求は、その余の点について判断するまでもなく理由があり、また、被告水谷が第三債務者の供託した供託金につき還付を受けたのは、法律上の原因なくして利得を得たものということができるから、被告水谷は、原告に対し、右供託金を返還すべきである。
二 被告第一商事関係
1 前記前提事実、証拠(甲一三、乙一ないし五、証人小野寺宏匡、証人谷村泰光)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
破産会社は、貸金業を営む被告第一商事から、平成六年に金一〇〇万円を利息月三分で借り受け、その後平成九年に更に金一〇〇万円を利息月六分で借り受けて、その利息合計金九万円を毎月支払っていたが、平成一〇年一二月二八日に右各貸金債権を合わせて金二〇〇万円の金銭借用証書(乙三)を作成し、取引銀行において不渡事故が発生したとき等には、期限の利益を喪失する旨約した。また、破産会社は、かねてから被告第一商事に対し、停止条件付債権譲渡書(乙一)を差し入れて、破産会社が期限の利益を喪失したとき等に、破産会社の売掛債権を譲渡する旨や、被告第一商事が債権譲渡の通知を破産会社に代わって行うことができる旨を約しており、平成一〇年一二月二八日には、当時の売掛金一覧表を被告第一商事に差し入れた。
破産会社は、平成一一年一月末日まで被告第一商事に利息を支払い、右貸金返還債務の履行期を一か月後である同年二月末日まで延期してもらっていたが、被告第一商事は、破産会社が不渡り事故を起こした平成一一年二月二六日の後に、破産会社が期限の利益を喪失したとして、破産会社が被告第一商事に差し入れていた売掛金一覧表中の債務者(第三債務者)に対し、破産会社に代わって債権譲渡の通知書を発送し、右通知書は同月二日又は三日に第三債務者に到達した。
2 右の事実、証拠(証人小野寺宏匡、証人谷村泰光)及び弁論の全趣旨によれば、破産会社は、貸金業を営む被告第一商事から金員を借り入れるに際し、同被告との間で支払停止等の事由を停止条件とする債権譲渡契約を締結し、その当時の売掛債権明細表を被告第一商事に差し入れ、数か月ごとに新たな売掛債権明細表を差し入れていたこと、被告第一商事は、金員を貸し付ける場合には、支払停止等の事由を停止条件とする債権譲渡契約を締結していることが認められ、この事実及び前記証拠に照らして考えると、被告第一商事が、金員を貸し付ける場合に、右のように支払停止等の事由を停止条件とする債権譲渡契約を締結したのは、支払停止後に対抗要件を具備した場合であっても、右対抗要件具備の日が債権譲渡の効力を生じた一五日以内であれば、破産法七四条に規定する対抗要件の否認を免れることができることに着目し、専ら債務者の支払停止後における貸金債権の回収を目的とし、支払停止前に対抗要件を備えることなく、他の一般の破産債権者に優先して排他的に目的債権を取得する意図であると認められる。
そうすると、破産会社と被告第一商事との間の停止条件付債権譲渡契約は、支払停止前に締結されたものではあるが、債務者の支払停止と同時に目的債権の譲渡という効果を生じさせた上で目的債権を優先的、排他的に取得することのみを目的とした契約であって、その実質において、破産法七二条二号の定める危機否認の対象となるべき支払停止を知って締結された債権譲渡契約と同じものであるということができる。また、破産会社及び被告第一商事は、右債権譲渡契約の締結の時点において、その契約の効力を生じたときには、これが破産会社の他の一般債権者を害することになることを知っているもので、破産法七二条一号の定める故意否認の対象となるべき破産債権者を害することを知って締結された債権譲渡契約と実質的に同じものであるということができる。
したがって、右債権譲渡契約は、一般の破産債権者間の平等を害して債権譲受人のみが優先的、排他的に債権回収を図り、破産法に定める否認の制度を潜脱することを目的とする脱法的な契約であり、信義則に照らし、右債権譲渡契約は、破産法七二条一号、二号の準用により否認することができるというべきである。
そうすると、その余の点について判断するまでもなく、原告の被告第一商事に対する債権確認請求及び供託金の還付請求権確認請求は理由がある。
三 被告松橋関係
1 前記前提事実及び証拠(甲一三、丁二、四の一、証人小野寺宏匡)によれば、次の事実が認められる。
破産会社は、平成一一年二月一〇日、被告松橋から金一三八万円を、弁済期を翌三月九日の約定で借り受け、同日、被告松橋に対し、破産者の陸送賃債権一三八万円分を譲渡した。
被告松橋は、破産会社が不渡り事故を起こした平成一一年二月二六日の二日後である同月二八日に、右不渡りを知って、破産会社に代わって、第三債務者に対し、債権譲渡の通知書を発送し、翌三月一日に右通知書は到達した。
2 右の事実によれば、破産会社と被告松橋は、平成一一年二月一〇日に債権譲渡契約を締結したが、その債権譲渡の通知は、破産会社の支払停止日(同月二六日)の後に、破産会社及び同被告がこの事実を知って発せられたものであって、債権譲渡契約の締結の日である同年二月一〇日から一五日を経過した後にされたものであるから、破産法七四条一項により、原告は、右対抗要件を否認することができる。したがって、原告がした対抗要件の否認により、被告松橋は、原告に対し、右債権譲渡を主張することは許されないから、原告の同被告に対する債権確認請求は理由がある。
四 よって、原告の被告らに対する本件各請求は理由があるから認容することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 下田文男)
別紙<省略>